介護サービスを利用する際に利用者が支払う負担が一定の上限を超えた場合、申請をすると超過分を払い戻してもらえる制度があり、これを「高額介護サービス費支給制度」といいます。
今回はこの制度の利用条件や申請方法、注意点について解説していきます。
支給条件とは?所得や課税の有無でこんなに違う!
高額介護サービス費支給制度とは、利用者が介護サービスを受けるときに払いすぎたお金を、高額介護サービス費として支給する(払い戻す)ものです。
介護サービス利用に係る利用者の負担限度額は、個人や世帯の所得によって異なります。
厚生労働省は、以下のとおり区分と負担の上限を定めています。
(表1:利用者の区分と負担の上限(月額))
区分 負担の上限(月額) 現役並み所得者に相当する方がいる世帯の方 44,400円(世帯) 世帯内のどなたかが市区町村民税を課税されている方 37,200円(世帯) 世帯の全員が市区町村民税を課税されていない方 24,600円(世帯) ・老齢福祉年金を受給している方
・前年の合計所得金額と公的年金等収入額の合計が年間80万円以下の方等24,600円(世帯)
15,000円(個人)生活保護を受給している方等 15,000円(個人) 2017年4月7日現在
(厚生労働省 http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/kougakukaigo.pdf)
通常、利用者の自己負担は1割となっていますが(一定以上の所得のある第1号被保険者(65歳以上)は2割負担)、この1割の自己負担額が表1に定められた上限を超えた場合は、超過分が高額介護サービス費として支給されます。
また、同一世帯に介護サービス利用者が複数人いる場合には、全員の利用者負担額を合算できます。
支給申請方法とは?どこに申請して、いつもらえる?
高額介護サービス費の支給を申請するためには、申請書と介護保険被保険者証をお住まいの市区町村役場の窓口に提出する必要があります。
提出は代理人が行うことも可能ですが、その場合、身分を確認できるものの提示が必要です。高額の支給申請から支給決定までは、以下のような流れで行われます。
①支給申請
まずは、居住する市区町村の保健福祉担当課に支給申請を行います。
支給申請書は担当課の窓口で受け取ることができるほか、市区町村役場のホームページからダウンロードもできます。
この支給申請書により、高額介護サービス費を受領する口座を登録しますが、口座が本人名義ではない場合、委任状が必要です。
市区町村への申請は、払い戻しが発生する月に毎回行わなければならない場合と、初回申請時に口座登録をすることで、以後超過分を自動で償還してくれる場合があります。
お住まいの市区町村のホームページ・窓口で確認してみましょう。
②支給決定
利用者が1カ月に負担した額と世帯・被保険者本人の所得状況を確認した後、支給額がある場合は、支給決定通知書が送付されます。
同時に、指定された口座に高額介護サービス費が振り込まれます。
サービスの利用から振り込みまでは、通常3~4カ月程度かかります。
以上のような流れで高額介護サービス費が支給されます。
払い戻しの対象にならないものがある?
高額介護サービス費の注意点
高額介護サービスの支給を受ける際に注意することとして、以下の2点が挙げられます。
①高額介護サービス費に含まれないもの
老人ホームなどの居住費や食費、差額ベッド代、生活費、その他保険適用外サービスなどの費用は、高額介護サービス費には含まれず、払い戻しは不可能です。
また、在宅で介護サービスを受けている場合には、福祉用具の購入費や住宅改修費などもかかることがありますが、これらも高額介護サービス費の支給対象とはなりません。
申請の際には、支給対象となる高額サービス費の内容についてよく確認しておきましょう。
②高額サービス費の受給権には、時効がある
サービス利用月の翌月1日(または利用者負担額支払日の翌日)を起算日として2年経過すると、受給権が時効により消滅します。
毎月申請を行わなければいけない場合は、利用者負担を超えて支払いを行っていないかどうかを月ごとに確認し、申請を忘れずに行いましょう。
以上が特に注意しなければならないことです。
申請前に市区町村役場の担当職員や利用している介護サービス施設の職員に確認すると、支給の有無、日取りなどを具体的に知ることができます。
申請の扱いは市区町村ごとに異なる点が多いので、まずは相談してみましょう。
介護サービスの利用にかかるお金は、日額で見ると大きな金額ではなくても、月額、年額として長期的にみると相当な金額になります。
超過分は忘れずに申請して、適切な額のみを支払うようにしましょう。