病気になった時やケガをした時、保険証を病院の窓口に提出すれば治療費は一部負担のみで済みます。
日頃当たり前のように利用している公的医療保険制度ですが、その仕組み・内容については意外と知られていません。
今回は公的医療保険制度について、理解を深めてみましょう。
(記事中のデータは2017年5月6日現在のもの)
身近な存在の公的医療保険制度の仕組みについて
公的医療保険制度と言うといかにも難しそうに思われがちですが、私達にとって大変身近な制度です。
例えば、病院の窓口に健康保険証(本人確認を目的の場合、記号・番号と保険者番号部分は見えないように加工してから提出する必要があります)を提出すると診療費を一部負担するだけで受診できますが、残りの診療費は公的医療保険に納められる健康保険料で賄われています。
日本の公的医療保障制度は、全ての人が何かしらの医療保険制度に加入し、保険料を納めることによってお互いに支え合う「国民皆保険制度」によって成り立っています。
どの公的医療保険に加入しているかによって、受けられる保障も異なりますので、まずは自分が加入している公的医療保険を把握しておきましょう。
主な公的医療保険と加入対象者
公的医療保険名 | 加入対象者 |
全国健康保険協会 組合管掌健康保険(協会けんぽ) |
主に中小企業の従業員とその被扶養者 |
組合管掌健康保険(健康保険組合) | 主に大企業の従業員とその被扶養者 |
各種共済の短期給付部門 | 公務員、教職員などとその被扶養者 |
船員保険の医療給付部門 | 船員とその被扶養者 |
国民健康保険 | 自営業者、上記に当てはまらない専業主婦など |
後期高齢者医療制度 | 75歳以上の人 |
一般企業の従業員が加入する協会けんぽや健康保険組合などの健康保険、公務員や教職員が加入する各種共済は、職場単位で加入するため職域保険と呼ばれています。
職域保険の特徴は、扶養制度があり、年間収入など一定の条件を満たす家族も保障の対象となることです。
保険料の負担金額は被保険者の所得によって決定され、被扶養者が増えても保険料の負担額は変わりません。
一方、国民健康保険の運営の主体は自治体、後期高齢者医療制度の運営主体は後期高齢医療広域連合で、職域保険に加入していない人が加入することになっており、地域保険とも呼ばれます。
国民健康保険や後期高齢者医療制度には扶養制度がなく、世帯の中の加入すべき人数に対して保険料を納める点、また傷病手当金、出産手当金の支給がない点が健康保険と異なります。
公的医療保険にはどのような制度や給付があるのか?
医療費を一部負担するだけで治療を受けられることは良く知られていますが、公的医療保険に加入していれば他にも様々な保障があります。
- 高額療養費制度
長期入院をしたり、大きな手術を受けたりして医療費が高額になってしまった場合、一定額を超えると治療費の払い戻しを受けられる制度です。
所得と年齢によって自己負担限度額は異なります。
- 子供に対する医療費の助成
子供が一定の年齢になるまで医療費を補助してくれる制度です。
自治体によって対象年齢や助成の内容が異なります。
- 出産した場合の一時金と手当金
高額になりがちな出産費用の負担軽減のため支給されるのが出産一時金です。
万一流産や死産となった場合でも 妊娠4ヶ月以上ならば支給の対象となります。
また出産のために仕事を休み、給料の支払いを受けていない場合には出産手当金が支給されます。
支給期間は出産日以前日目から出産の日の翌日以後日目まで、支給額は標準報酬日額の分の相当となります。
- 介護サービスの提供
介護が必要になった時には、介護サービスの提供を受けることができます。
要介護の程度や年齢などによって受けられるサービスは異なります。
- 病気やケガで仕事ができなくなった場合の傷病手当金
病気やケガで長期間仕事を休む場合、給料が支払われなくなったり下がったりすればその間の生活費を保証してくれます。
連続欠勤の日目から最大年ヶ月の間、標準報酬月額分のの金額が傷病手当金として支給されます。
ただし先に触れたように、国民健康保険では出産時の手当金、また病気やケガの場合の傷病手当金は支給されませんので注意が必要です。
医療費の自己負担割合
年齢 | 自己負担割合 |
未就学児 | 2割 |
6歳~69歳 | 3割 |
70歳以上
|
2割(原則) |
3割(現役並み所得者) | |
75歳以上
|
1割(原則) |
3割(現役並み所得者) |
公的医療保険制度以外にも知っておきたい「公費負担医療制度」
日本の公的医療保障制度は公的医療保険制度だけではなく、同時に公費負担医療制度を設けています。
国や自治体が法律や条例に基づいて、健康保険などの医療保障だけでは負担が大きくなりがちな特定の疾病について費用の全額、または一部を負担します。
日本では300以上の指定難病について、公費負担医療制度が適用されています。
民間医療保険が医療制度の要となっているアメリカなどと比べれば、日本は安心して医療給付を受けられる国だと言えるでしょう。
ただしこうした公的医療保険制度は、原則として自分で役所などに申請しなければ給付を受けることができません。
病気や怪我をした時には、まず病院の窓口や医療ソーシャルワーカーに相談したり、役所に問い合わせをしてみることをおすすめします。