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国民健康保険証(本人確認を目的の場合、記号・番号と保険者番号部分は見えないように加工してから提出する必要があります)を病院で提示して、医療費を支払うのは当たり前の光景ですよね?
このとき支払うのは、健康保険を利用したことによって実際にかかっている医療費の1割~3割です。
では、「自分はめったに病院なんか行かないから10割支払う。その代わり保険料も納めない」
ということは可能なのでしょうか?
また、「毎月の保険料支払いが苦しいからしばらく払っていない」という場合はどうなるのでしょうか?
今回は「国民健康保険料を納めない(滞納する)」ことについて、分かりやすく解説していきます!
意外とみんなが知らない!
「国民健康保険料=税金」という事実
「保険」と聞いて思い浮かぶものには、「火災保険」「生命保険」などもあるでしょう。
これらは「不測の事態に備えて、身を守るために保障を得ておく」ということですよね?
つまり「そんなに大変なことはそうそう起きないのに保険料を支払うなんてバカらしい」
と思う方は加入しておらず、言い換えれば「自由保険」です。
これらを提供する保険会社は加入者から保険料を集め、
実際に「不測の事態」が起こった方に支払いが行われ、残りが会社の利益となります。
では同じ「保険」と名の付いている国民健康保険ではどうでしょう?
これは「自由保険」とは真逆の「強制保険」で、民間会社ではなく自治体(市区町村)によって運営されています。
「国民健康保険料」と呼ばれるのが一般的ですが、「国民健康保険税」とも呼ばれる立派な税金の一つです。
つまりこれを支払わないのは「脱税」という違法行為になるのです。
「自分が医療を受けようが受けまいが自由じゃないか!」と考える方もいるでしょう。
しかし日本では「国民一人ひとりの健康」=「社会的な財産」という考え方であるため、
「健康を自ら放棄する」という行為が認められていません。
これが国民健康保険料が税金(義務)である理由です。
滞納していると何が起きるのか?
第一段階(納期限の翌日以降~1年経過)
ではこの税金を支払わず、滞納を続けるとどうなるのでしょうか?
まず役所から通知書・電話などで何度も催促を受けることになるでしょう。
この状態が1年未満は続くことになりますが、
期間が経つほど、通知書・電話が来るだけでなく、役所への呼び出し状が来る・自宅に直接やってくる、
といったように催促の厳しさが増します。
さらに有効期間が数ヶ月の「短期被保険者証」に切り替えが行われます。
そして1年が経過するとこの「短期被保険者証」も無効となり⇒「資格証明書」が発行されます。
これは保険証ではないので、病院などでは医療費を10割負担しなくてはいけません。
保険料が支払われた場合に(=保険証が再び交付された場合に)、
申請すれば「この10割負担分―自己負担分以外」を返還してもらうことができます。
しかし「保険料が支払われた場合に」ですので、差し引きするとマイナスになることも当然起こりえます。
滞納していると何が起きるのか?
第二段階(1年半以上経過)
まず、保険給付の「一部または全部」が差し止められます。
つまりこの時点で「正式な保険加入者ではなくなってしまう」ということです。
それでも滞納を続けると「財産の差し押さえ」処分が行われることがあります。
この場合の財産とは、銀行預金・勤務先からの給与(手取りの1/4まで)・不動産・自動車などの動産と、
「現金(になるもの)全て」が対象になります。
この差し押さえは、ローンの滞納などによる場合と違い、
裁判を経ることなく行われる行政行為です。
つまり役所独自の判断で「いつでも簡単に差し押さえられる」という性質を持っています。
「滞納はしたくない!でも払えない!」
と困っている場合の対処法3つとは?
ここまでを見ていくと滞納するのは決して得策ではなく、
支払わずに済むものではないことが分かるでしょう。
しかし、現実には「払いたくても払えない」という理由で滞納してしまっている方も多いはずです。
そこで何より先に取るべき手段は、役所への相談です。
もちろんただ支払えないという言い訳を伝えに行くわけではなく、
①「分割措置」または②「減免措置」を受けられないかを相談するのです。
①「分割措置」については、結局は全額を支払うことを前提にするものなので、
毎月の確実な返済額を提示できれば、認められる可能性が高いと言えます。
なぜ分割にしなければならないかという経済状況を示せる書類(源泉徴収票・住民税証明書など)
を持参した上で相談すると、分割が認められる可能性がより高まるでしょう。
②「減免措置」はその名の通り保険料を減らすものなので、審査は厳しく、
各自治体によって認められる条件がはっきりと決まっています。
一般的には、
■世帯収入が基準以下
■災害に遭った
■急な退職(失業)を余儀なくされた
などが挙げられます。
実際にどのような減免が行われるかの例を以下に表で示してみます。
世帯人数
|
軽減の基準となる所得金額(単位 円) | |||
7割軽減 | 5割軽減 | 2割軽減 | 3割軽減 | |
1人 |
330,000
|
595,000 (590,000) |
810,000 (800,000) |
610,000 |
2人 | 860,000 (850,000) |
1,290,000 (1,270,000) |
890,000 | |
3人 | 1,125,000 (1,110,000) |
1,770,000 (1,740,000) |
1,170,000 | |
4人 | 1,390,000 (1,370,000) |
2,250,000 (2,210,000) |
1,450,000 |
(大阪市・平成27年度)
もし相談に行き、説明・資料提示を精一杯しても、これらの措置を受けられないこともあるでしょう。
その場合でもまだ諦める必要はありません。
③「親族の扶養に入る」という手段が残されています。
同一世帯であれば3親等以内の親族の扶養家族になることが可能で、
「年収130万円未満」かつ「扶養家族の年収の1/2未満」であることが条件です。
今回は国民健康保険料の延滞・対処法について紹介してきました。
「延滞の前に必ず役所に相談」⇒「ダメなら『扶養家族』を視野に入れる」がカギです!