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年金は大きく分けると「厚生年金」「共済年金」「国民年金」の3種類になります。
厚生年金(会社員が加入)と共済年金(公務員・私学教員が加入)は給料から天引きされるので、
滞納は起きません。
滞納が問題になるのは、自らが納付しなければならない国民年金です。
この国民年金を支払わずに滞納するとどうなるのか、
またどうしても支払えない場合にはどうしたらいいのか、
今回はこの2点を中心に国民年金を解説していきます!
国民年金保険料
<20歳以上の日本人全員が支払わなければならない義務>
国民年金=①老齢年金だけをイメージされがちですが、
②「障害年金」(病気やケガの際の保障)
③「遺族年金」(世帯の主が死亡したとき)
も含まれます。
いざという時のために支払いが欠かせないものですね。
また20歳~60歳の日本人は「強制加入」で、
自動的に毎月支払い義務が発生するのが国民年金保険料(以下、年金)です。
これは「国民年金法第77条・78条・87条」に規定があります。
この法に基いて厚生労働省(委託先の日本年金機構)が徴収を行うので、
滞納したとき場合、最終的には「行政行為」として財産の差し押さえなどを行うことができます。
ここにポイントがあり、行政行為であるということは裁判を起こすことなく(裁判所に認められなくても)、
独自の判断で差し押さえができるということです。
では、この最終段階に至ってしまう前にどんなことが起きるのでしょうか?
また、支払えない場合の対策と合わせて見ていきましょう。
催告状⇒特別催告状⇒最終催告状⇒督促状…
と、送付物がどんどん厳しくなる
年金は当月分を翌月末までに支払うことになっています。
例えば3月分は4月末までに支払わなければいけません。
では具体的に、滞納を続けるとどうなるのかを見ていきましょう。
翌月末を過ぎても当月分を支払わないと「滞納」状態になります。
⇩
①「催告状」が送付されます。
これは「滞納状態である」ということを知らせるだけの内容で、
滞納分と新たな納付期限が載せられています。
⇩
さらに滞納を続ける。
⇩
1年以上滞納
⇩
②「特別催告状」が送付されます。これには滞納分と新たな納付期限のほか、
そして「期限までに納付されない場合は法的措置を取る」という警告が内容に加わります。
⇩
さらに滞納を続ける。
⇩
③「最終催告状」が送付されます(平成24年度・約69000件)。
ここにもさらに新たな納付期限が記載されており、
「期限を越えての滞納分には延滞金14.6%が上乗せになる」
「財産が差し押さえられる可能性」
という内容になります。
「それでは特別催告状とあまり変わらないのでは?」と思われますが、
「延滞金14.6%」「財産の差し押さえ」という具体的な措置が載せられていることから、
「差し押さえ対象になりました」という厳しい意味が含まれています。
⇩
さらに滞納を続ける。
⇩
④「督促状」が送付されます。
法律により、財産の差し押さえをする前には「督促状」を送付しなければならないと定められています。
つまり、「催告状が届いた=いつ財産の差し押さえが強制執行されてもおかしくない」という状態です。
(実際の差し押さえは、平成24年度・約6000件)
最終催告状送付までには対処すべき!
どうしても支払えない場合は?
件数を見ると分かりますが、最終催告状を送付された人の1/10が、実際に財産を差し押さえられています。
ということは、滞納してしまった場合、遅くとも「最終催告状」が届くまでにどうにか対処しなければなりませんね。
一口に「対処」と言っても、お金に余裕がある方は支払いをするだけですが、
その余裕がない方はどうしたらよいのでしょうか?
そこでぜひ役立ててほしいのが「保険料免除」「保険料納付猶予」という2つの制度です。
注意しなければならないのは免除・猶予ともに「世帯所得」で計算されるということです。
この制度を利用するには、世帯全員の合計所得が一定以下でなければいけません。
<免除制度>
前年の「世帯所得」が一定以下の場合に申請をすれば、
「全額」「3/4」「半額」「1/4」の納付が免除されます。
その「一定」の基準(目安)が下表です。
世帯構成
|
全額免除
|
一部納付 | ||
1/4納付 | 1/2納付 | 3/4納付 | ||
4人世帯(夫婦+子供2人)の所得 | 162 万円 |
230 万円 |
282 万円 |
335 万円 |
2人世帯(夫婦のみ)の所得 | 92 万円 |
142 万円 |
195 万円 |
247 万円 |
1人世帯の所得 | 57 万円 |
93 万円 |
141 万円 |
189 万円 |
(2017年3月13日現在)
この金額は「所得(手取り)」です。
例えば表の「57万円」の「所得」がある方の「収入」は、122万円ほどでしょう。
申請を考えている方は、この点に注意してください。
<猶予制度>
①若年者納付猶予制度
「50歳未満」
「世帯所得が57万円以下」
の2点を満たしている期間は、支払いを猶予してもらえる制度です。
②学生特例納付制度
「大学・大学院・短期大学・高等学校・専修学校・各種学校の学生(通信制も含む)」
「(世帯は無関係で)本人の所得が118万円以下」
の2点を満たしていれば、その期間は支払いが猶予されます。
「支払わなくていいなら全額免除と同じでは?」と思われますが、
猶予期間は「老齢年金保険料納付期間」には算入されますが、
免除と違い「年金額への反映」がありません。
つまり、「将来年金をもらう資格は得られるけれども、受給額は猶予期間の分低くなる」ということです。
ちなみに老齢年金は原則25年以上の納付で受給資格が発生します。(平成29年8/1からは「10年以上」に変更)
このように、猶予を受けたままでは受け取れる年金が減ることになりますが、
過去10年分までは遡って追納することができるので、将来受け取る額を調整することができます。
国民年金をまとめると、
①支払いを逃れることはできない。
②どうしても支払えない場合は「免除・猶予制度」を活用すべき。
ものだといえます。
延滞し続けても、結局は自分を苦しめるだけですので、当然お勧めできません。
この記事を読んでいただいた方が、国民年金をよく知り、上手に活用できることを祈っております!