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住宅を購入すべきか、それとも賃貸の方がいいのか…ある程度の年齢に差し掛かると誰もが一度は考える問題かもしれません。
生涯コストを比較した場合には一体どちらが損をしてしまうのでしょうか?
今回は、住宅に関わる生涯コストの損得について詳しく解説していきます。
持ち家と賃貸では生涯コストが大きく異なってくる?
例えば単純に、ローンを組んでマイホームを手に入れるのと、賃貸住宅を借り続けるのとを比較すれば、コスト面では賃貸住宅の方が得であるように思われます。
賃貸住宅の家賃と同じ金額を住宅ローンの返済に当てればマイホームが手に入るとも言われますが、持ち家の場合だと実はそれ以外にも 住宅ローンの利息や固定資産税などの税金、また管理費や修繕積立金などの維持費用が必要になります。
そこで、持ち家を購入した場合の支払い総額を次の条件でシミュレーションしてみました。
・35歳で物件を購入し35年ローンを70歳で完済。その後85歳まで生活すると考えます。
・物件価格3500万円
・頭金ゼロ
・3500万円を2%の金利の住宅ローンで支払い
35歳から85歳までの51年間で…
購入時手数料(物件価格の10%) 350万円
ローン支払い総額 およそ4870万円(利息 およそ1370万円)月額返済額:115,941円
固定資産税 年間15万円 15万×51年=765万円
管理費、修繕費積立など 月5万円 5万×12ヶ月×51年=3060万円
リフォーム代など 500万円
85歳までマイホームで暮らすために必要な費用は約9545万円となります。
一方、賃貸住宅に35歳から85歳まで住み、9545万円支払う場合だとどの程度まで家賃に費用をかけることができるでしょうか?
・家賃に変更はないものとする
・2年に一度、契約更新料とその他保証料家更新手数料などを含めて家賃1.5ヶ月分を支払うものとする
という条件設定なら家賃15万円程度の賃貸住宅に住むことができそうです。
持ち家を選択した場合のコスト面でのメリット・デメリットとは?
住宅にかかる生涯コストを人生の中でどのように配分するかということも非常に重要なことです。
持ち家の場合は、先ほどのシミュレーションに基づけば70歳でローンの支払いは完了します。
その後管理費などは必要となるものの、住居費の占める割合はずっと小さくなりますから、年金生活に入ってもローンを完済していれば住居費が負担にならない点はメリットであると言えるでしょう。
しかし先に触れたように持ち家は築年数が経つと頻繁に修繕やリフォームが必要になるかもしれず、あらかじめ準備していた予算以上に費用がかかることも考えられます。
また、家族構成が変化していっても住居をサイズダウンすることはできず、例えば子供が独立してしまえば広いスペースはコスト面で効率的とは言えないかもしれません。
賃貸住宅を選択した場合のコスト面でのメリット・デメリットとは?
賃貸住宅では、家族構成に合わせて引っ越しすれば無駄なスペースに対して支出する無駄が省け、効率よく住居費を調整できる点がメリットです。
しかし、以下のようにデメリットも多くあります。
①その時々の家族構成に合わせて住宅を選ぶとしても、そもそも引っ越し自体に結構な費用がかかります。
②年金生活を迎えた時に現役時代と同じように家賃を支払い続けることができるのかどうかという問題も出てくるでしょう。
③年金生活を迎えた時にこれまでの家賃を継続して支払って行くことができなければ、家賃の安い住宅に引っ越す必要がありますが、高齢者は賃貸住宅を借りにくいという問題もあります。
④将来、身体的な障害などが出てきた時でも、賃貸住宅では基本的には手すりや段差解消のためのリフォームができない点もデメリットだといえます。
個別の事情によって生涯コストの損得は変わるもの!
このように「持ち家」と「賃貸」の生涯コストは、単に必要な費用だけで比較することが難しいものです。
住む場所に何を求めるかは人によって異なります。同じ場所にずっと住み続けることを望む人とそうではない人、ペットと一緒に暮らしたい人と生き物は苦手な人、資産として不動産を子供などに残したい人と、自分がいなくなった後には何も残しておきたくない人
…結局自分の生き方に合った住宅を選ばなければ、生涯コストをいくら考えてみたところであまり意味がないでしょう。
大切なのは持ち家を選ぶにしろ賃貸住宅を選ぶにしろ、自分が住んで満足できることです。
こだわりを持って自分の住む空間を好きなように作り上げたい、と言うなら持ち家の方が いいでしょう。
また住宅ローンなどに縛られず、その時々に住んでみたい土地で暮らしたい、と言うなら賃貸住宅の方がいいでしょう。
持ち家なら中古住宅をリノベーションしたりDIYで好きなように作り上げたりすれば価格を抑えることができます。また賃貸も公営住宅ならかなり家賃を抑えることもできます。
「持ち家」と「賃貸」の生涯コストを単純に比較するのではなく、自分がどう暮らしたいか、生活に何を求めるかという点をまず最重要に考えた上でコストに目を向けることが大切でしょう。