この記事の目次
仕事に追われ家事に追われ、それに加えて親の介護もしなければならない。
介護をする側はお金や時間など自分の生活を犠牲にして介護をしているのが現状です。
しかし、お金や時間がない場合でも、介護を続ける方法があります。
今回は介護に悩んだときの相談先や、よりよい介護の方法を紹介します。
介護が必要な割合
厚生労働省が行った「国民生活基礎調査」の結果から、人口1,000人当たりの日常生活に影響のある65歳以上の率は、258.2であることがわかりました。
男女別に見てみると74歳までの数値は男性が僅差で高くなっていますが、75歳以上の場合男性が264.0であるのに対して、女性は277.4という結果が出ており、高齢になるほど女性の数が男性を上回っていることもわかっています。
介護放棄は犯罪
介護は毎日休みなく続けなければならず、終わりが見えない不安やストレスから、親の介護に疲れてしまい介護放棄をする人がいることも事実です。
思い詰めて死を選んでしまう場合もあるため、介護の問題は非常に根深い社会問題ともなっています。
しかし民法上、親の世話をすることは子供の義務であるとされています。
自力で生活できない相手に対して介護を放棄することは、保護責任者遺棄罪という罪にとわれてしまうため、介護放棄は絶対にしてはいけません。
しかし、自分の生活を犠牲にしてまで、介護をしなければならないという強制的な義務ではないのです。
介護に悩んでいる人はひとりで悩みを抱え込んでしまうことが多いですが、公的機関や専門機関に頼ってもいいということを忘れないでください。
第三者を頼る
どうしても在宅介護が難しいときや、介護に疲れてしまったときは第三者を頼りましょう。
介護を他人に任せるなんて薄情ではないか、などと考えないでください。
介護の負担を減らすことがお互いのためになるのであれば、誰かを頼ることは悪いことではありません。
施設に入所させる
施設の種類は民間運営の「有料老人ホーム」「その他の施設」、公的施設である「介護保険施設」「福祉施設」の4つに大きく分けられます。
施設によってサービス内容や施設の目的、入居条件、金額は様々ですが民間運営の施設は介護サービスが付いていることが多いです。
入居条件は入居者が自立しているのか、介護が必要なのか、認知症を発症しているのかなど条件があるので入居を検討する前に確認しましょう。
ホームヘルパーを雇う
ホームヘルパーは正式には訪問介護員といい、国家資格である介護福祉士やヘルパー1級・2級、介護職員初任者研修修了者などの資格を取得している介護の資格を持った人達が訪問介護をしてくれるサービスです。
主なサービスは日常的な家事を提供する身体介護と、食事・入浴・排泄などの介助を行う生活援助の2種類になります。
仕事をしている昼の間だけホームヘルパーを雇って介護をしてもらうことができます。
お金がない場合の方法
施設への入所やホームヘルパーを雇うにはお金が必要です。
どうしてもお金が用意できず、仕事などで時間がとれず自分で介護をすることも難しい場合のために助けてくれる制度もあります。
介護放棄をしてしまう前にこれから紹介する方法を試してみてください。
役所に相談する
親に介護が必要になったと、最初に相談するのは市区町村に置かれている役所です。
役所によって名称は変わりますが、介護保険課などの部署が相談を受けています。
市区町村によって介護保険の制度があるので、それについて説明を受けることができ、利用をしたければ支援を受けることができます。
世帯分離をおこなう
同じ家に住んでいて住民票に1つの世帯として記載されている家族が、2世帯以上に分かれることを世帯分離といいます。
世帯分離をすれば介護をする際の負担額を減らすことができるのです。
なぜなら介護の自己負担額は世帯の所得に応じて決められているため、介護を受ける本人の取得ではなく1つの世帯の所得の合算で決められています。
負担を軽くするためには世帯の所得を減らす必要があり、それには世帯分離をすることが有効になります。
世帯分離は市区町村の役所に行けば、簡単な手続きで完了します。
しかし、世帯分離をすると別世帯になった家族の住民票の取得をするために、委任状が必要になるなど手続きが少し面倒になるデメリットもあるので、手続きをする前に確認しておきましょう。
『世帯分離』と『同一住所に世帯主2人』は同じ意味でしょうか?
市外から息子が戻って同居するのですが、住民票を移す際「世帯主はどうしますか?」と聞かれました。
病気理由で退職し、当分
は疾病手当てを受給するのですが、その後の就職は全然未定です。国保保険料や税金面などを抑えるには、息子本人を世帯主にしたほうがいいのでしょうか?(国保保険料の減額の世帯合算で年収1000万以下…の条件が、適用されるなど)宜しくお願いいたします。
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q10163551460?__ysp=5LiW5biv5YiG6Zui
生活保護の申請をする
生活保護とは「市町村から生活のための資金を援助」してもらうことです。
自立した生活をするための制度ですが、近年は高齢者の生活保護受給率も増えてきています。
生活保護は生活保護の基準額よりも世帯の収入が低い場合に、基準額に届かない不足分を受給することができます。
この基準額は家族数や年齢などによって決められ、年金を受け取っている場合も生活保護を受けることができます。
生活保護は生活費だけではなく、介護費や医療費の扶助もしてもらえるため要介護になった場合にとても助けになる制度です。
しかし、収入がなくても土地や貯金、生命保険などの資産がある場合はそれらを売却や処分してからしか受給はできないので注意してください。
リバースモーゲージを利用する
リバースモーゲージとは自宅を担保にして、そこに住み続けながら金融機関から融資を受けることができる融資制度です。
生前は返済を迫られることなく毎月お金を借りることができ、死後住宅を売却したお金で一括返済をします。
生きている間は家に住むことができ、55歳または60歳以上のシニア向けの制度になっているため介護の費用を目的として利用できます。
ただし、対象となる住宅に制限があることや、長生きすると融資枠を使い切ってしまう可能性があることなどを理解して利用しましょう。
特定入所者介護サービス費を利用する
特定入所者介護サービス費とは、生活保護の受給や所得の少ない人に対して介護保険施設を利用する際の居住費と、食費の負担が軽減される制度のことです。
住んでいる市区町村に負担限度額認定を申請して、認定されれば利用することができます。
生活福祉資金貸付制度
生活福祉資金貸付制度というものがあります。まずは、新潟県の社会福祉協議会の抜粋を見てみましょう。
「生活福祉資金貸付制度は、所得の少ない世帯、障害者のいる世帯及び介護を要する高齢者のいる世帯に対して、必要な相談支援と資金の貸付けを行うことにより、その世帯の生活の安定と経済的自立を図ることを目的としています。」新潟県社会福祉協議会:http://www.fukushiniigata.or.jp/seikatsu/msystem/
この生活福祉資金貸付制度は、都道府県社会福祉協議会が主体になって実施している制度で、対象者は以下の通りです。
低所得者世帯 必要な資金を他から受け取ることが難しい世帯 障害者世帯 身体障碍者手帳、療育手帳、精神障碍者保健福祉手帳の交付を受けた人がいる世帯 高齢者世帯 65歳以上の高齢者がいる世帯
連帯保証人は原則必要になりますが、連帯保証人を付けない場合も貸付を受けることはできます。
ただし、連帯保証人を付けない場合は年1.5%の利子がかかります。詳しくは最寄りの市区町村社会福祉協議会に問い合わせてください。
一人で抱え込まないこと
介護で悩んでいる人の多くは、一人でその悩みを抱え込んで自分を追い込んでしまいます。しかし、親の介護は自分の生活を犠牲にしてまで続ける義務はなく、困ったときに頼れる機関はたくさんあります。
地域包括支援センターに相談をする
地域包括支援センターは市区町村などの自治体で、それぞれに保健師もしくはベテランの「看護師」「社会福祉士」「ケアマネージャー」が配置されています。
介護だけではなく「福祉」「健康」「医療」などの様々な分野の相談を受けてくれ、各機関と連携して問題解決に努めてくれます。
福祉事務所に相談をする
福祉事務所は都道府県と市区に、必ず設置することが義務付けられていいます。
各事務所によって名称は変わりますが、大きく「総務課」「相談室」「福祉課」「保護課」に分けられており、介護関係は福祉課に相談するとよいでしょう。
「福祉事務所とは、社会福祉法第14条に規定されている「福祉に関する事務所」をいい、福祉六法(生活保護法、児童福祉法、母子及び寡婦福祉法、老人福祉法、身体障害者福祉法及び知的障害者福祉法)に定める援護、育成又は更生の措置に関する事務を司る第一線の社会福祉行政機関です。」厚生労働省:http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/fukusijimusyo/index.html
社会福祉士に相談をする
社会福祉士とは専門的知識と技術をもち、身体や精神の障害または日常生活に支障をきたす人の福祉に関する相談に応じて助言や指導、サービスを提供することを仕事にしている人を指し、社会福祉業務に携わる国家資格を持っています。
社会福祉士は施設や地域包括支援センターで働いている福祉の専門家ですから、誰に話をすればいいかわからないときは社会福祉士に相談することをおすすめします。
社会保険労務士に相談をする
社会保険労務士は、社会保険労務士法に基づいた国家取得者になります。
社会保険労務士は労働と社会保険に関する専門家で、年金についても相談を受けてくれるので年金について困ったことがあったときに相談しましょう。
ファイナンシャル・プランナーに相談をする
ファイナンシャル・プランナーは主に資金計画を立てて、経済的な部分をサポートしてくれます。
くらしとお金に関して家計管理から老後の生活設計まで幅広いお金に関する相談に対応しており、年金・社会保険や介護・医療費についてもサポートしてくれます。
今後の準備をする
介護が必要になるのが老後だけとは限りません。
いつ介護をする側になるか、される側になるかは誰にもわかりませんから、そうなる前に準備できることを考えることも必要です。
介護保険について学ぶ
介護保険について基本的なことを知っておけば、いざというときに困ることはありません。
日本では急速な高齢化により2000年から介護保険制度がスタートし、各市区町村が運営をしています。
公的な介護保険は40歳になると保険料を支払い、いざ介護が必要な場合にサービスを受けることができるようになっています。
市区町村によってサービスの内容が変わってくるため、役所で事前に説明を聞いておくと安心です。
また、民間の保険会社でも介護保険が充実しているので若いうちに老後の計画を立てておくことも大切です。
家族と話し合いをする
もしも家族の誰かに介護が必要になったときに、どうするのかを話し合っておくことも必要です。
施設に入りたいか、家で介護を受けたいかなど家族の意向を聞いておくことで、介護を受ける家族の負担やストレスを減らすことができます。
また、あらかじめ意向を聞いておけば施設に入所してもらうときに、後ろめたさなどを感じることもありません。
なお、家族で保険や社会制度について、勉強することでより理解が深まります。
お互いの将来のためにできることを、余裕があるうちにしておくことはとても重要なことです。
まとめ
介護はする側も受ける側も負担が大きいものです。
しかし、専門家を頼ることでお互いの生活を守ることができますし、社会制度を知っているだけで介護にかける時間もお金も軽減することができます。
自分の生活を犠牲にしてまで介護をする義務はないので、ひとりで悩まずそれぞれの家庭に合った方法で介護を続けていきましょう。