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介護保険制度の改正のニュースを聞いたことがあるでしょうか。自分には関係ないと聞き流している人も多いでしょうが、介護問題は誰にでも関係のある身近で重要な問題です。
自分が当事者になった時に慌てなくても良いように、介護保険制度の中身をしっかり理解しておきましょう。
介護保険制度ってなに?どんな人が対象なの?

私たちの社会は急速に高齢化が進んでいます。
それに伴って介護が必要な人の割合が年々増えており、支える家族にとって大きな負担になっています。それは単にお金の問題だけでなく、少子化や核家族化、介護する家族の高齢化等により介護は家族だけで解決することが非常に困難な問題となっているからです。
介護保険制度とは、介護が必要な状態になっても本人や周りの家族が安心して暮らせるよう、社会全体で介護をサポートするために作られた制度になります。
40歳以上の人は強制的に介護保険制度に加入し保険料を支払うとともに、加入者は介護が必要になった時に必要なサービスを自己負担1割(所得の多い人は2割)で受けられるようになります。
財源は保険料だけでなく税金からも賄われ、その割合は50%ずつとなっています。
月々の納付額や納付方法は?

介護保険制度は前述のとおり40歳以上の人が対象となり、40歳を過ぎると介護保険料の支払い義務が発生し、亡くなるまで支払い続ける必要があります。
介護保険制度では65歳以上の人(第1号被保険者)と、40歳から64歳までの人(第2号保険者)では保険料の算定方法が変わってきます。
介護保険制度の財源のうち50%は保険料が負担しますが、そのうち65歳以上の人が22%、40歳から64歳までの人が28%を負担することになります。
年齢 | 保険料 | 納付方法 | |||
第1号被保険者 | 65歳以上 | 市区町村によって異なる 所得に応じて金額が設定 (標準は9段階) | 納入通知書もしくは 年金からの天引き | ||
第2号被保険者 | 40歳から64歳 | 加入している医療保険によって異なる | 加入している医療保険料に加算 |
第1号被保険者の保険料は、上記表の通り市区町村や所得によって異なりますが現在(平成27年~29年度)の全国平均は月額5,514円となっています。
一方、第2号被保険者の保険料は加入する医療保険によって異なり、現在(平成28年度10~3月)の月額の見込額は5,347円です(厚生労働省HP「介護保険制度の概要」より)。
しかし急速な高齢化により、第1号被保険者の保険料平均は2020年には6,711円、2025年には8,165円に上昇することが見込まれています。
介護保険制度 開始時の保険料が2,911円であったことを考えると実に3倍弱に保険料が増えることになります。
いかに個人の負担が増え、そして制度を維持するのに必要な税金が膨れ上がっているかが分かるでしょう。
介護保険制度は2018年度の改正でどう変わる?私たちの暮らしへの影響
老後を安心して暮らすためにとても大事な介護保険制度ですが、高齢化が進むことで個人の負担が増え、制度を維持することが難しくなっています。
介護保険制度の仕組みは、3年を一区切りとして見直すことになっており、次回2018年度に介護費用を削減するために大きく改正されます。
その改正内容は現在(2017年3月)時点では審議中ですが、方向性は以下のように固まってきています。
- 要介護認定の更新期間が現状の24ヵ月から36ヵ月に延長され、自治体の負担を軽減する。
- 原則1割負担、所得によって2割となっている介護サービスの自己負担を、さらに所得によって3割負担とする。
- 要介護度の改善に取り組む自治体を評価し、財務支援をおこなうインセンティブを導入する。
- 軽度の要介護者である要介護1,2の人に対する生活援助サービスは継続する。ただし、事業者へ対する介護報酬は減少する。
- 福祉用具貸出価格の見直し
他にも変更が検討されている項目はいくつもありますが、改正内容としては要介護者の自己負担を増やすものや、要介護認定者を少なくするためのものなど、いかに介護費用を絞り込むかに焦点を当てたものになっています。
介護保険制度はどう変わっていくのか 長期的な見通しは?
介護保険制度の概要と、そして今後介護保険制度を存続させることがいかに難しいものであるか、少しお分かり頂けたのではないでしょうか?
介護問題は、高齢化が進む日本が避けては通れない重大な問題です。
2025年には団塊の世代が後期高齢者となることで介護費用がさらに膨れ上がり、介護保険制度の維持が厳しくなることが懸念されています。
今回は2018年度の改正に着目してきました。
次の2020年度にはさらに大きな変更が行われる見通しであり、現在一律となっている40歳から64歳までの第2号被保険者の保険料が収入によって負担額が変わるようになったり、介護保険の加入年齢が40歳未満に引き下げられたりする可能性もあります。
私たちは保険料を払う立場として、介護者を支える家族の立場として、そして将来自分が介護を受ける立場として、当事者意識をもって問題に目を向けることが大切です。