もしも、自分や家族が大きな怪我や病気になって高額な医療費が必要になったときに、どのようにして支払えば良いのか不安に感じたことがある方は少なくないはずです。
そんな時に、この高額医療費制度を知っていれば焦らずとも、決められた限度額以上の分は支払ったお金を返金してもらうことができます。
高額医療費制度とはどんなときに使えるのか?
高額医療費制度というのは、1ヶ月(1日から月末まで)で支払った医療費の自己負担額が高額になった時に決められた限度額以上は返金してもらうことができるという制度です。
1ヶ月で支払った金額というのは、同一世帯、または同じ人であれば、合算することができますので、領収書を管理しておくことが大切です。
また、合算できるのは、「70歳未満で自己負担が1ヶ月で21,000円以上のもの」となっています。
70歳未満の方自己負担限度額を記載しておきます。
所得区分 | 自己負担限度額 | 多数回 |
①区分ア (標準報酬月額83万円以上の方) (報酬月額81万円以上の方) |
252,600円+(総医療費-842,000円)×1% | 140,100円 |
②区分イ (標準報酬月額53万円~79万円の方) (報酬月額51万5千円以上~81万円未満の方) |
167,400円+(総医療費-558,000円)×1% | 93,000円 |
③区分ウ (標準報酬月額28万円~50万円の方) (報酬月額27万円以上~81万円未満の方) |
80,100円+(総医療費-267,000円)×1% | 44,400円 |
④区分エ (標準報酬月額26万円以下の方) (報酬月額27万円未満の方) |
57,600円 | 44,400円 |
⑤区分オ(低所得者))(被保険者が市区町村民税の非課税者等) | 35,500円 | 24,600円 |
2017年3月20日現在
また、高額医療費制度というのは健康保険の適用範囲内でないと利用することができません。
保険外の医療費については制度の利用はできませんので、注意してください。
そして、高額医療費制度を利用して払い戻しを受ける際、1年間(直近の12か月)で3か月以上払い戻しをしてもらっていた場合には、4か月目からは自己負担限度額がさらに下がるような仕組みになっています。
これが、表の多数回というところに当たります。
任意で医療保険に加入するなど、もしもの時の蓄えを作っておくことも非常に大事ですが、この制度を理解して知っておくことで、世帯の医療費が増えるようなことがあっても、家計の負担が小さくて済むのです。
実際にもらうことのできる金額はいくらになるの?
では、実際にどれくらいの医療費を支払った場合に、お金を払い戻してもらえるのかということですが、これは、その人の標準報酬月額、または報酬月額でそれぞれ異なってきます。
前項での表の通り、所得区分によってまず大きく5段階に分かれています。
表に掲載されていない金額(例えば、月額報酬が51万円だった場合など)については、標準報酬月額の計算から求めることになります。
計算法は、
「健康保険料の控除額」÷「保険料率(労働者負担分)」=「標準報酬月額」
となりますので、給与明細などが手元にあれば計算で簡単に知ることができます。
例えば、東京の全国健康保険協会に加入している場合には、2017年度の労働者負担分は4,955%(9,91%÷2)となっています。
仮に給料明細に記載されている健康保険料控除額が11,892円の場合には、
11,892(健康保険料控除額)÷0.04955(保険料率)=240,000(標準報酬月額)
と算出することができるので、前項の表の区分エに該当することが分かります。
ちなみにこの計算に必要な「保険料率」は都道府県ごとに異なり、以下のようになっています。
平成29年度都道府県単位保険料率 北海道 10.22% 滋賀県 9.92% 青森県 9.96% 京都府 9.99% 岩手県 9.82% 大阪府 10.13% 宮城県 9.97% 兵庫県 10.06% 秋田県 10.16% 奈良県 10.00% 山形県 9.99% 和歌山県 10.06% 福島県 9.85% 鳥取県 9.99% 茨城県 9.89% 島根県 10.10% 栃木県 9.94% 岡山県 10.15% 群馬県 9.93% 広島県 10.04% 埼玉県 9.87% 山口県 10.11% 千葉県 9.89% 福島県 10.18% 東京都 9.91% 香川県 10.24% 神奈川県 9.93% 愛媛県 10.11% 新潟県 9.69% 愛知県 10.18% 富山県 9.80% 福岡県 10.19% 石川県 10.02% 佐賀県 10.47% 福井県 9.99% 長崎県 10.22% 山梨県 10.04% 熊本県 10.14% 長野県 9.76% 大分県 10.17% 岐阜県 9.95% 宮崎県 9.97% 静岡県 9.81% 鹿児島県 10.13% 愛知県 9.92% 沖縄県 9.95% 三重県 9.92% 2017年3月20日現在
けんぽ協会各支部(https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat330/sb3130/h29/290210)
制度を利用してお金をもらうための申請方法とは?
高額医療費制度を利用してお金を返してもらう方法には2つの手段があります。
一つは事後に受け取る方法。そして、もう一つは事前に申請をして限度額を負担してもらって支払う方法になってきます。
①事後に申請をする場合
医療機関の窓口で、まず一括してすべての金額を支払います。
その後、申請書類を提出することによって、払戻金として、お金を受け取ることができます。
お金に余裕がある場合には良いのですが、一時的に全額の支払いをしなければならないので、金銭的余裕がないときには難しい手段になります。
②事前に申請をする場合
医療費が1ヶ月で負担限度額を超えてしまいそうなことがわかっていたり、入院をしたりするような時には、この事前の申請をしておくことで窓口での支払い金額そのものを抑えることができるのです。
この事前・事後どちらの手続きをする場合でも、
①保険証、②印鑑、③振込先口座の分かるもの、そして冒頭で触れた④領収書の4点を用意し、
全国健康保険協会(けんぽ協会)の支部に申込書を提出することになります。
けんぽ協会各支部(https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g7/cat710/sb7130/sbb7131/1762-620)
高額医療費が発生する可能性は誰にでもあります。もしもに備えてこの制度をよく理解し準備をしておきましょう!