親から子や孫に対して財産を継承させる場合、亡くなった場合に自動的に継承される相続以外に、まだ意識がはっきりしているうちに財産を分配する手段として生前贈与というシステムが有り、近年たびたび利用されるようになっています。
遺産を相続した場合、財産の規模に応じて相続税という種類の税金が発生するわけですが、生前贈与を行なった場合にも当然ながら税金が発生するものと考えられます。
生前贈与を受けた場合にはどのくらいの税金を支払わなければならないのかということや、相続税と比較した時にどちらが節税効果が高いのかといったこと等について解説をしていきます。
生前贈与はどんな時に納税義務が生じてどんな時に非課税となるの?
まずは生前贈与について、どんなケースの場合に税金を納める義務が生じ、どんなケースの場合に税金を納めなくてもよいのかということについて、解説をしていきます。
そもそも生前贈与とは、生きているうちに財産を分け与えることを指し、予め財産を分け与えておくことで相続時の相続税を節税するという目的や、遺される親族に対して自分の希望通りに財産を相続させやすくするという目的で利用されています。
現在の法律(2017年4月22日現在)では、財産を相続する場合、法定相続人が1人であれば3600万円(以降は法定相続人が1人増える毎に600万円が加算、法定相続人が2人であれば4200万円、3人であれば4800万円)の基礎控除があり、相続する資産総額がこの範囲以内であれば、節税目的で生前贈与を行う必要はないと考えて差し支えありません。
なお、基礎控除額を超えた場合には、相続した金額に応じて10%から最大55%もの相続税がかかることとなるので、注意が必要です。
基礎控除額を超える額の資産がある場合や、相続法とは異なる形での財産分与を行いたいという場合に生前贈与をおこなうと良いでしょう。
なお生前贈与を行う場合には、贈与する資産額が大きい場合には贈与税が発生することとなります。
贈与税には毎年受取人一人あたりに対して110万円の基礎控除がある他、様々な特殊控除があるので、贈与税がかからない範囲で生前贈与を行い、相続時に相続税が発生しない程度まで財産を分配しておくことで、全くの非課税で相続をすることが可能となっています。
さらに贈与税の特殊控除の中には60歳以上の祖父母や親から20歳以上の子や孫への贈与を対象とした、相続時精算課税という制度があり、この制度を利用して贈与を行えば2500万円までの贈与が非課税となります。
相続時精算課税制度を利用して生前贈与を行い、さらに通常の相続をおこなった場合、仮に法定相続人が一人であった場合でも6100万円の控除を受けることができます。
それぞれの基礎控除だけでもこれだけの控除を受けることができるので、制度をうまく活用したいですね。
生前贈与を活用した節税のテクニックとは!?
相続税の基礎控除と贈与税の相続時精算課税制度を活用すれば、法定相続人が子ども一人であった場合でも6100万円の基礎控除が利用できることについてはお分かりいただけたかと思います。
一方で、相続額が6100万円を超える場合には相続に関して税金がかかってしまうと考えられる訳ですが、幾つかのテクニックを駆使することで、相続額が6100万円を超える場合でも納税額を0に抑えることができます。
おすすめのテクニックについて紹介をしていきたいと思います。
節税のためのテクニックとして、最も手堅く簡単な方法としておすすめなのが、贈与税の基礎控除を活用する方法となります。
毎年110万円までの贈与であれば無条件で非課税となるので、時間はかかりますが、早い段階から毎年110万円ずつ贈与を行い、相続時に納税義務が発生しない程度まで財産を減らしておくことで、相続税の発生を抑えることが出来るのです。
また祖父母や親から子や孫へ対する贈与であれば数多くの特殊控除があるので、特例控除を活用して節税を図るというのもおすすめとなります。
住宅取得資金贈与(最大3000万円までの贈与が非課税)や結婚子育て資金贈与(最大1000万円までの贈与が非課税)などが代表的な特殊控除となっており、これらの制度を利用すれば、子どもや孫に対して非課税かつスムーズに生前贈与を行うことが可能となるのです。
なお、結婚子育て資金贈与は平成31年3月31日までの期間限定の特例制度となっているので、早めの活用が肝心になります。
まとめ
いかがでしたか。
どんな場合に相続額が発生するのかということや、どんなケースにおいて生前贈与を活用するのが効果的なのか、ということなどについておわかりいただけたでしょうか。
相続額が数千万円程度であれば相続税の基礎控除と生前贈与の相続時精算課税制度を利用することで、納税義務がゼロとすることができますし、基礎控除だけでは抑えきれない場合には幾つかのテクニックを駆使することで納税額を減らすことができます。
せっかくの財産を目減りさせないためにも、節税の制度やテクニックはうまく活用したいですね。