私たちが何気なく支払っている所得税ですが、その金額はどのように決まっているかご存知でしょうか?
同じ年収の人でも結婚している人や子供がいる方、自宅のローンを払っている方など様々です。
所得税では、個人の事情を考慮して所得税の金額を控除してくれる仕組みが存在しています。
知っておかないと損をするこの所得税の控除について、今回は解説します。
所得税の控除って何?支払うべき所得税の額はどのように決まっているの?
さて、まずは所得税の金額がどのように決まっているかを順番に説明します。
まず、「収入」から「給与所得控除」が差し引かれたものが「所得」になります。
①「収入」-「給与所得控除」=「所得」
普段何気に「収入」や「所得」といった言葉を使っている人も多いでしょうが、税法上は実はこのような違いがあるのです。
「給与所得控除」は「収入」の金額によって控除額が変わり、上限220万円を上限として収入から差し引かれます。
さらに、①で求めた「所得」から、個人の様々な事情を考慮して差し引かれるのが『所得控除』です。
②「所得」-『所得控除』=「課税所得」
この「課税所得」の金額に応じて5%~45%の範囲で所得税率が決まり、次の式で「所得税」が決まります。
③「課税所得」×「所得税率」=所得税
①~③の式を見てわかるように、『所得控除』の金額が大きくなれば「課税所得」の金額を下げられるだけではなく、金額によっては「所得税率」の割合も下がる可能性があることが分かります。
所得税から控除される項目はどんなものがあるの?

それでは、控除項目にはどんなものがあるのか見ていきましょう。
以下の表は、『所得税』からの控除項目の一覧となります。
控除項目 | 該当者 | 控除額 |
所得控除 | 給与所得者 | 所得に応じて変化 最低でも65万円~220万円(平成29年分) |
基礎控除 | 全員 | 38万円 |
配偶者控除 | 「年間の収入が103万円以下の配偶者」を扶養している場合 | 38万円もしくは48万円 |
配偶者特別控除 | 配偶者の収入が103万円以上、141万円未満の場合 | 収入に応じて段階的に控除38万円~0円 |
扶養控除 | 「年間の収入が103万円以下の配偶者以外の16歳以上の親族」を扶養している場合 | 扶養対象に応じて38万円~63万円 |
社会保険料控除 | 本人が支払った社会保険料が対象家族の社会保険料を本人が支払った場合も控除対象 | その年に支払った金額の全額 |
生命保険料控除 | 生命保険料を支払っている場合 | 生命保険料の金額に応じて最大12万円 |
地震保険料控除 | 地震保険を支払っている場合 | 地震保険料の金額に応じて最大5万円 |
勤労学生控除 | 本人が学生で、年収130万円以下の場合 | 27万円 |
障害者控除 | 本人または一緒に住んでいる家族が障害者の場合 | 区分により27万円/40万円/75万円 |
寡婦(寡夫)控除 | 寡婦(寡夫)の場合 ※寡婦(寡夫)とは配偶者と死別や離婚をしていて再婚をしていなくて、子育てをしている人 |
区分により27万円/35万円 |
小規模企業共済掛金等控除 | 以下の3つに該当する掛金に加入している場合・独立行政法人中小企業基盤整備機構の共済契約の掛金 ・企業型年金加入者掛金または個人型年金加入者掛金・心身障害者扶養共済制度の掛金 |
その年に支払った金額の全額 |
ふるさと納税(ワンストップ特例制度) | ふるさと納税を行い、ワンステップ特例制度を行った場合 | |
住宅借入金等特別控除 | 住宅ローンを利用して、マイホームを購入、新築、増改築などを行った場合に10年間適用 | 毎年の借入残高に応じて変化限度額あり |
まず、「配偶者控除」、「配偶者特別控除」、「扶養控除」について、収入103万円が控除を受けることができるかどうかの分かれ目になっています。
上記の表のうち、いくつかのポイントについて解説します。
パートなどで働いている主婦の方など、「年収は103万円を超えないようにしよう」と気を付けている人も多いと思いますが、年収103万円を超えるとこのような控除を受けられないなどのデメリットがあるからです。
それから「社会保険料控除」や「生命保険料控除」ですが、給与天引きの場合は問題ありませんが、個人で支払っている場合には年末調整の際に忘れないように申請するようにしましょう。
また、『iDeCo』という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、これは「個人型確定拠出年金」のことで『所得税』からの控除項目になります。
将来受け取る年金を個人で積み立てることで節税につながるお得な制度ですので、利用を検討してみるのも良いではないでしょうか?
所得税控除のために必要な書類は?なにを準備すれば良いの?
所得税の控除申請を行う際、いくつかの添付書類が必要となる場合があります。
ギリギリになって慌てないよう、事前に必要書類を把握して、揃えておくようにしましょう。
まず「生命保険料控除」「地震保険料控除」の場合、保険会社から送られてくる「保険料控除証明書」が必要になります。
10~12月ごろに保険会社から郵送されてきますので、無くさずに保管しておいてください。
また、「社会保険料控除」の場合は、国民年金機構から郵送される「国民年金保険料控除証明書」等が必要です。
「住宅借入金等特別控除」の申請を行う場合は、金融機関が発行する「年末残高等証明書」が必要です。
なお、住宅ローンを借り入れた初年度は年末調整ではなく確定申告を行う必要があるので、注意してください。
「小規模企業共済掛金等控除」の申請の際には、それぞれ加入している掛金等の「控除証明書」が必要になります。
そのほかのケースとしては、例えば転職して中途入社した場合、「前の会社の源泉徴収票」が必要となります。
『所得税』の控除を受けるためにはたくさんの必要書類がありますので、事前に集めて整理しておき、申請の際にすぐに提出できるようにしておきましょう。
所得税と控除について、少しお分かりいただけたのではないでしょうか?
まずは控除項目をしっかりと把握し、控除が受けられるのであれば漏れなく申請を行うようにしましょう。
また、所得税だけでなく税金とは奥深いもので、調べれば調べるほどに様々な節税方法が見つかります。
自分の状況に合った節税方法を一度考えてみてはいかがでしょうか?