保険会社の提供する個人年金について、その仕組みをご存知でしょうか?
国民年金と同じように、老後に年金が支給されますが、受け取るためには税金を払わなければなりません。
思わぬところで損をしないために、どのタイミングで税金が発生するのか、そしてその計算方法、節税についてなど、詳しく見ていきましょう。
所属税の雑所得。年金における、総収入額と必要経費の求め方
年金は「所得」として扱われますので、毎年受け取る時に所属税の雑所得の対象になります。
年金の契約者と受取が同じ場合はイメージしやすいと思いますが、注意しなければならないのは、受取人が奥さんなど、別の人を指定している場合です。
その場合、初回は贈与税を徴収され、2年目以降は所属税がかかるようになります。
この雑所得がいくらになるかは、以下の計算式で求められます。
・雑所得の金額 = 年間の年金額 - 必要経費
・必要経費 = 払込保険料の合計 ÷ 年金の見込総支給額
計算式だけを見ると、意外と簡単ですよね。
ただし、この「年金の見込総支給額」という項目が厄介で、なかなか複雑な求め方が必要になります。
以下の表をご覧ください。
年金の種類 | 年金の見込総支給額 |
終身年金 | 年間の年金額 × 余命年数 |
確定年金 | 年間の年金額 × 支給期間 |
保証期間付終身年金 | 年間の年金額 × 余命年数と保証期間年数のうち、長い方の年数 |
有期年金 | 年間の年金額 × 支給期間と余命年数のうち、短い方の年数 |
気になるのは「余命年数」という項目ですが、こちらは所得税法の中で、定められています。
年齢 | 51 | 52 | 53 | 54 | 55 | 56 | 57 | 58 | 59 |
男 | 26 | 25 | 25 | 24 | 23 | 22 | 21 | 20 | 20 |
女 | 31 | 30 | 29 | 28 | 27 | 26 | 25 | 25 | 24 |
年齢 | 60 | 61 | 62 | 63 | 64 | 65 | |||
男 | 19 | 18 | 17 | 17 | 16 | 15 | |||
女 | 23 | 22 | 21 | 20 | 19 | 18 |
つまり、雑所得=その年の年金額から必要経費である保険料を引いた額、ということになります。
かかる税金は、所属税と贈与税。それぞれの計算方法について
まず所得税についてですが、まずは前章で求めた雑所得を見る必要があります。
以下の例を元に、具体的に計算をしてみましょう。
項目 | 内容 |
性別 | 男性 |
年間の年金額 | 50万円 |
払込保険料の合計 | 950万円 |
年金の種類 | 終身年金 |
受給開始年齢 | 58歳 |
・必要経費: 50万円 × 950万円 ÷ (50万円 × 25年) = 38万円
・雑所得: 50万円 - 38万円 = 12万円
この計算で算出した雑所得に対し、所得税が算出されます。
例えば25万円未満の場合は源泉徴収がされず、基礎控除額の38万円以下となるため、所得税そのものがかかりません。
25万円以上の場合は、10.21%の税率がかかります。
所得税は毎年受け取る「所得」に対してかけられる税金ですが、契約者と受取人が違う場合、「財産の贈与」の扱いとなり、年金を受け取る権利に対して税金がかけられます。
贈与税額については、以下の計算式で求められます。
【年金の見込総支給額 - 基礎控除(110万円)】×贈与税率-課税価格別の控除額
基礎控除後の課税価格 | 200万円以下 | 300万円以下 | 400万円以下 | 600万円以下 |
率 税 | 10% | 15% | 20% | 30% |
控除額 | ‐ | 10万円 | 25万円 | 65万円 |
基礎控除後の課税価格 | 1,000万円以下 | 1,500万円以下 | 3,000万円以下 | 3,000万円以下 |
率 税 | 40% | 45% | 50% | 55% |
控除額 | 125万円 | 175万円 | 250万円 | 400万円 |
上記の例で計算すると、以下の金額になります。
・年金の見込総支給額: 50万円 × 25年= 1250万円
・贈与税額: (1250万円 - 110万円)× 40% - 125万円 = 331万円
前もって知っておこう。
お得に年金を受け取るための2つの節税対策
年金を受け取るには税金がかかります。
場合によっては、かなりの課税がされる場合もあるでしょう。
明るい老後のためには、少しでも節税対策をしておくことが重要です。
そこで、ここでは2つの主だった節税方法をご紹介しましょう。
・年金の受取人は、契約者本人にしておく
年金の契約者と受取人が違う場合、贈与税がかかってしまいます。
前章までをご覧いただくことで分かる通り、贈与税の税率はかなり高く設定されているため、契約者本人が受け取ることでかなり節税することが可能です。
既に別の受取人で契約してしまっている場合は、保険会社に連絡し、受取人の変更手続きをした方が良いでしょう。
ただし、その時点までの贈与税が発生してしまうので、注意しておかなければなりません。
・一括受取と毎年受取、どちらが得か計算しておく
年金には「一括受取」と「毎年受取」の二種類の受取方法があります。
このうち一括受取の場合、原則一時所得という扱いになり、課税計算が異なるため、基本的には納税額の軽減につなげることができます。
これだけ見ると一括受取の方がお得に思えますが、毎年受取の場合、年金の運用期間が延びるため、総支給額が多いというメリットがあります。
どちらの方が手元に残る金額が多くなるかは、個々人の契約内容によるので、事前に細かく計算しておくと良いでしょう。